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特許権の性質と対象となる範囲

日ごろ何気なく使用している家具や家電、文房具や日用品など、身の回りの物ほぼすべてが人の知恵から生み出されていると言って良い現在、使いやすいデザインや性能の向上といったアイデアは形を持たず、目に見えないので「無体財産」とも呼ばれますが、「知的財産」としてきちんと保護されるべき財産といえます。

今回は、目に見えない財産、知的財産を守る「知的財産権制度」の中から「特許権」について、保護の対象や出願方法、権利の侵害などについてご紹介します。

特許権とは?

カメラの自動ピント調節機能や、書いた文字が消せるボールペンインクなど、今までなかった新しい物を発明した時、その物自体や物の製造方法、使用方法の発明などを事業として無断で他人に使わせない権利を特許権と言います。

しかし、発明内容の詳細を特許庁に出願し、登録されなければ特許権を行使できないので注意が必要です。特許権を侵害されないよう、登録された発明は公開され、誰でも発明内容を知ることができます。

特許を得た発明は発明者しか利用できないわけではなく、特許使用料を支払えば誰でも利用可能ですし、お互いが合意すればその発明を買い取ることも可能です。

しかし、保護される期間は出願から20年間(医薬品等については最長25年まで延長できる場合あり)で、その後は誰でも自由に利用することができます。

(存続期間)
第六十七条 特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する。
引用元:特許法第67条

特許権は、多くの時間とコストを費やして発明した発明者に対する敬意と、産業の発展の両方を実現するための仕組みといえます。

特許権の取得方法は

特許を出願し、登録されるまでには多くのプロセスを踏まなくてはなりません。特許出願では出願後に審査請求を行うことで審査が始まります。


参考:特許権と特許出願 | 日本弁理士会

出願内容に不備がないか、同じような内容のものが既に登録済みではないかなど、1件ずつ精査しなくてはならないので時間もかかります。

短い場合は半年程度で登録できることもありますが、長い場合は5年ほど、最長では10年もかかる場合もあります。

ここで注意しなければならないことが、特許権の保護期間は、出願から20年ということです。出願から登録までに時間がかかればその分、保護期間が減ってしまいます。

審査請求は出願日から3年以内に行わなくてはなりませんが、出願と同時に審査請求をすることも可能です。審査は基本的に審査請求された順に行われるので、審査時間を短縮できます。

特許請求の範囲(クレーム)とは

発明を特許庁に出願する時、発明のどこからどこまでを特許として出願するのか、特許を受けようとする発明の詳細を説明する「特許請求の範囲(クレーム)」を提出しなければなりません。

登録後は、権利の範囲を定める基準ともなる重要なものです。発明した物を特定する時に提出するのが「物クレーム(product claim)」、方法の発明を特定する時は「方法クレーム(process claim)」などと呼びます。

化学物質など、具体的な構造が説明できない場合は、“物の製造方法によってその物を特定するクレーム(product by process claim)”が認められることがあります。

しかし、物と方法とでは特許権の効力が変わってくる可能性が高く、多くの場合は物クレームなのか方法クレームなのかはっきりさせないと登録は認められません。

クレームがあいまいだと特許の境目もあいまいになり、特許権の侵害が起きやすくなります。

特許権の侵害とは

特許権は、財産を守る知的財産権制度のひとつです。特許を取得した発明と似たような製品を生産しているほか、販売しているのを発見した場合、その製品が特許権の侵害になるか慎重に見極めなければなりません。

疑わしい製品の実物はもちろん、カタログなどなるべく多くの資料を揃え、製品をしっかり分析し、クレームと照らし合わせます。

分析の結果、やはり特許権を侵害していると判断した場合は相手方に文書で警告します。
書式は特に決まっていませんが、特許権の侵害をしている製品、その理由や根拠、製造の差し止めや損害賠償の請求など要求を記載するのが一般的です。

その後、当事者間で解決できなければ訴訟といった法的手段を取ることになります。

特許権の侵害によるペナルティとは

発明者が不利益を被らないよう、特許権は手厚く保護されており、特許権侵害の訴えが認められた場合、相手方にはペナルティが科せられます。

【刑事上のペナルティ】

  • 最大10年の懲役か最大1,000万円の罰金、もしくは両方
  • 最大5年の懲役か最大500万円の罰金、もしくは両方
  • 相手方が会社に属している場合はさらに、その会社に対して最大3億円の罰金

(侵害の罪)
第百九十六条 特許権又は専用実施権を侵害した者(第百一条の規定により特許権又は専用実施権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
引用元:特許法第196条

第百九十六条の二 第百一条の規定により特許権又は専用実施権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
引用元:特許法第196条の2

(両罰規定)
第二百一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第百九十六条、第百九十六条の二又は前条第一項 三億円以下の罰金刑
二 第百九十七条又は第百九十八条 一億円以下の罰金刑
引用元:特許法第201条

【民事上のペナルティ】

差し止め請求

特許権を侵害している製品の生産の差し止め、すでに生産済みの製品の廃棄などを請求できます。

損害賠償請求

特許権を侵害されたことにより被った被害額の請求が可能です。

不当利得返還請求

特許権を侵害された場合は、そのことにより相手方が不当に得た利益を返還請求できます。

信用回復措置の請求

事実関係を説明した謝罪文などを発表し、ホームページ上や新聞広告に掲載するよう請求できます。

特許権の侵害をしないために

事前に回避する

特許権の侵害は経済的にも社会的にも重いペナルティが科せられるので、製品の開発や製造方法など特許権侵害に当たらないか慎重に調査する必要があります。代替技術などに置き換え可能なところは問題ありませんが、どうしても他者の特許権を侵害しそうな場合は、特許を取得している相手とライセンス契約を締結しましょう。

ライセンス料の支払いは発生しますが、ペナルティは一切生じません。交渉によっては特許権自体を買い取ることも可能です。お互いが納得のうえで特許権の買い取りができれば、その後の製品開発などにも活かせるので、状況に応じて提案してみましょう。

警告を受けた場合

故意でなくても他者の特許権を侵害してしまう場合があります。相手方から警告を受けた時は、速やかに事実確認を行い、特許権侵害の有無にかかわらず、なるべく早く文書で回答しましょう。

レスポンスが遅く後ろ向きの対応をすると相手方の心証が悪くなります。早い段階で事実を認め、誠実な対応を取れば相手方との交渉の場を得て、ペナルティを軽減できる可能性があります。

また、ライセンス契約の締結や特許権の買い取りといった、いい方向に交渉を発展させられる可能性もあるので前向きに対応しましょう。

海外での特許権の効力は

特許庁に出願して取得できる特許権は日本国内にしか効力はありません。日本以外の国で発明の保護を受けるには、それぞれの国で法令に則り、特許権を取得する必要があります。
対象となる国で個別に出願しても構いませんが、複数の国に出願する場合、特許協力条約(PCT)の活用が有効です。

約130ヵ国のPCT加盟国に特許庁を経由して出願できるので、少ない手続きで済みます。
しかし、日本で特許権が取得できたからといってほかの国でも取得できるとは限らないので注意が必要です。

今回は目に見えない財産、知的財産を守る「知的財産権制度」のなかから「特許権」について、保護の対象や出願方法、権利の侵害などについてご紹介しました。

特許権とは、多くの時間とコストを費やして新しい物を発明した発明者に対する敬意と、産業の発展の両方を実現するための仕組みです。

出願に必要なクレームの作成など、難しい部分もありますが、知的財産法を取り扱う弁理士に相談すると代理で行ってくれるので活用してみてください。