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企業内法務部と顧問弁護士の違い

最近では企業内法務部で働く弁護士の数が増えていますが、顧問弁護士に依頼をするような場合とは具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

この記事では、企業内弁護士が増えている背景をお伝えした上で、企業内弁護士の役割と顧問弁護士との違いについて解説していきます。

企業内弁護士に関する3つの傾向

ここでは、日本組織内弁護士協会の調査をもとに企業内弁護士の周辺で起きている3つの変化についてご説明します。

企業内法務部で働く弁護士の数は増加傾向に

グローバル競争の激化やコンプライアンス遵守を求める情勢、弁護士数の増加などの背景もあり、企業内法務部で働く弁護士の数は増加の一途を辿っています。

2001年には企業内弁護士の数は66人でしたが、2019年には2,418人と、その人数は30倍以上まで増えています。

参照:企業内弁護士数の推移(2001年~2019年)

企業内弁護士を多く抱える業界とは

2001年時点では外資系証券会社が企業内弁護士を抱えていることが多かったですが、最近では日系企業でも企業内弁護士を採用するケースが増えています。具体的な業界は、証券、保険、総合商社、I T、物流、銀行などです。

参照:企業内弁護士を多く抱える企業上位20社(2001年~2019年)

企業内弁護士の女性比率が高まっている

近年は女性の社会進出が進んで久しいですが、企業内弁護士も例外ではありません。2001年の男女比は女性19.7%、男性80.3%でしたが、これが2019年には女性40.6%、男性59.4%となっています。

参照:企業内弁護士の男女別人数(2001年~2019年)

企業内法務部の弁護士に期待される役割とは

ひとえに企業内弁護士といっても、求められる役割や業務内容は業界や企業が抱えているトラブルによって大きく異なります。例えば知的財産権を武器にしている企業と、売掛金のスムーズな回収を期待している企業では、案件の中身が全く異なることは想像に難くありません。

そこで、ここでは企業が企業内弁護士を採用する際に一般的に期待しているようなポイントをお伝えします。

予防法務

近年注目を集めているのが予防法務です。予防法務とは文字通り紛争に発展する前に紛争の目をつむことであり、効果的に実施されれば企業にとって大きなメリットをもたらします。

第1に、業績悪化や倒産のリスクを少なくできます。企業が法律に明るくなかったがために、第三者から訴訟をされて高額な損害賠償責任が生じたとします。この時の請求がきっかけで、大打撃を受けたり倒産したような企業も存在します。

第2に、紛争に発展した場合でも企業にとっていい結果を得やすくなります。すでに発生している法律トラブルに対応するようなケースでは、企業の側に責められるべき事由があるのは普通のことです。予防法務によって従業員全体の法的リテラシーが高まっていれば、不法行為が起きにくくなるため、裁判になっても企業の側が不利になるような証拠が少なくなります。

いくら業績がいい企業でも、一度の不祥事で倒産に追い込まれることはありえます。こうしたリスクを避ける意味で予防法務は極めて重要だと言えるでしょう。

戦略法務

戦略法務とは、会社が得られる利益を最大化するために行われる法的手続きのことです。新規事業の開発やM&Aなどを行う際に、業界の知識と法律の知識を駆使し、意思決定を行う段階から企業の経営戦略に関与します。

戦略法務が必要になる場面とは例えば…
M&Aを行う際に、税金などのコストを検討しつつ最適な手法を選ぶ
デューデリジェンスを行う
自社にとって有利になるよう契約書の作成とレビューを行う
知的財産権を最大限活用する

臨床法務

臨床法務とは、すでに発生している法律問題に対して行われる法律事務のことです。債権回収や従業員トラブルへの対応、クレーム処理などがあげられます。最近では予防法務の方が注目を浴びてはいますが、臨床法務の重要性が低下したわけではありません。紛争を放置しておくほど企業にとっての損失は大きくなりかねないため、対応の優先度は決して低くはないでしょう。

企業内法務部の弁護士と顧問弁護士の違い

企業内弁護士と顧問弁護士の主な違いは…

  • 役割の違い
  • スピード感やコミットメントの程度の違い
  • 勤務時間の違い
  • 年収の違い

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.役割の違い

企業内弁護士も、顧問弁護士も業務の内容としては明確に大きな違いがあるわけではありません。しかし、両者の役割については異なる点があります。企業内弁護士は企業の問題点の抽出と案件処理を行うのに対し、顧問弁護士はアウトソーシング先として案件処理のみを行います。

当然ではありますが、企業内弁護士の方が所属する企業の内情に詳しいため、企業の現場で発生しているトラブルの根本原因を探ったり、将来発生しうるトラブルを見抜いて予防したりするような業務を期待されやすくなります。

2.スピード感やコミットメントの程度の違い

企業内弁護士は名前の通り企業の中で働いていますので、問題が発生した際にすぐ対応できます。顧問弁護士の場合は、企業内弁護士ほど気軽に質問できるわけではありませんし、質問の準備をしたり事実関係を整理したり、対応を待ったりする必要がありどうしても企業内弁護士が対応するよりも時間がかかってきます。

3.勤務時間の違い

企業内弁護士は会社の就業規則に基づき、決められた時間に勤務することになります。一方で、法律事務所に所属して働く顧問弁護士は案件の行程に従って自由な裁量で勤務をします。

4.年収の違い

企業内弁護士は、毎月一定の給料が支払われますが、顧問弁護士の場合は顧問先の数や依頼の数などによって月収が変わってきます。企業内弁護士は収入の安定感がある点は魅力ですが、ご自身で案件を集めて捌いていける方であれば、顧問弁護士として働く方が高収入を期待しやすくなります。

企業内法務部の弁護士に関してよくある疑問

企業内弁護士が増えると顧問弁護士のニーズがなくなるのか?

この点に関してはケースバイケースでしょう。企業内弁護士が外部の弁護士に案件を発注し、クオリティーに満足できればその後の依頼は増えるでしょうし、社内で処理した方がいいと判断されれば、継続的に依頼がなされることはないでしょう。

特定分野における高い専門性がある場合は、顧問弁護士が相対的に有利になるでしょう。企業内弁護士の業務は多岐に渡るので、弁護士によって取り扱い経験のある案件と少ない案件という偏りが当然出てきます。仮にある企業内弁護士に著作権周辺の事案を扱った経験があまりなく、かつ外部への依頼が必要な場合であれば、法律事務所で勤務する弁護士に仕事を依頼することは十分に考えられるでしょう。

企業内弁護士になると、企業での仕事とは別の案件を受任できなくなるのか?

就業規則や労働契約の内容次第でしょう。記載内容を十分に確認し、副業は認められているのかいないのか、認められているなら守るべき条件について規定があるのか、といった点を確認するといいでしょう。

弁護士会費の負担はしてもらえるのか?

弁護士登録を維持するためには弁護士会費を支払い続ける必要がありますが、この費用を企業が負担してくれるかどうかは契約の内容によります。話し合いのタイミングで会費を支払ってくれるのかどうか、どのような方法で負担してくれるのか確認をしておきたいところです。

まとめ

顧問弁護士と比べると、企業内弁護士は勤務先の企業の内情に通じています。企業を取り巻く状況や業界知識を生かして、従来からあるような案件の処理だけではなく、予防法務や戦略法務に携われる点が、企業内弁護士の大きな特徴となります。